今日は10月31日。

そう、ハロウィンの日。

元々お祭り騒ぎが大好きなミレイ会長が、何もしない訳は無く…

疲れ果てて僕は自宅と化している部屋の扉を開けた。

何時もより重たく感じるのは矢張女の子たちに追いかけ回された疲労からだろうか…

「ただいま…」

「おかえり、ロロ。今日は随分な人数に追い掛けられてたみたいだな」

「ただいま。うん…でも兄さん程じゃないよ」

そう、兄さんはいつもの如く沢山の女の子に、追い掛けられていた。

途中で何処かに逃げ込んだみたいで、でも見付けたい女の子たちがそれはもう鬼のような形相で必死に捜してたよ?

今ソファーに脚を組んで腰掛ける兄さんは、昼間必死に逃げてた兄さんとは別人の様に優雅だ。

やっぱり兄さんはこう優雅であるべきで…うん、綺麗だよ…

「ロロ、トリック オア トリート」

つい見とれて居た僕に、兄さんが不意にそう言った。

「え?」

「トリック オア トリート」

兄さんの言葉に信じられなくて聞き返すと、今度はゆっくりと、兄さんの口が動く。

慌てて僕はズボンのポケットや、制服の内ポケットを漁った。

しかし飴玉一つ出てこない。

どうしよう?

僕、兄さんにイタズラされるのかな?

なんなら僕が兄さんにイタズラしたいんだけど、色んな意味で。

「なんだ?お菓子持ってないのか?」

柔らかな笑みを浮かべながら、兄さんはそう言う。

「うん」

「じゃあ明日の夕飯当番はロロだな」

「え〜僕は兄さんの料理が好きなのに〜!」

それ、イタズラじゃなくて罰ゲーム?

そう思ったけど楽しそうに笑う兄さんに水を注したくなくて…

だからついつい当番も引き受けてしまう。

偽物でも、紛い物でも良いよ。

僕の大好きな兄さんが、穏やかに暮らせるならば、僕は演じるから、偽の弟を。

そして僕は制服から私服に着替えるために部屋から去るのだった…

=END=


**あとがき**
ハロウィンの日の一コマなイメージで書きました。
百合百合してるロロルルは可愛いと思いまし
た。
ミクシにあげてたのですが、こちらにもちゃんと載せなきゃと思いもって来ました。
08.11.09